人生100年時代と言われるようになり、老後の年金について不安や疑問を感じている人も多いでしょう。そんな時に頼りになるのが、年金事務所の年金相談です。
今回の記事では、年金事務所での年金相談の活用方法について解説します。年金相談の予約方法や持参すべきものについても紹介しますので、年金について疑問のある方は早速活用してみましょう。
この記事のポイント
- 年金に関することは、年金事務所で専門の相談員に無料で相談できる。
- 「街角の年金相談センター」でも年金事務所とほぼ同じ内容の相談ができる。
- 良くある相談内容は「年金請求」「見込額の照会」「年金記録の確認」など
- 電話で相談予約を取り、年金手帳と本人確認書類を忘れずに持参することが早く相談できるコツ
- 必ず予約してから訪問すべき。飛び込みでの相談はかなりの確率で待つことになる。
1.年金相談ができるのは「年金事務所」と「街角の年金相談センター」
まずは、年金について相談できる場所を確認しましょう。
年金について相談できるのは、主に次の5か所で、すべて無料で相談できます。
年金相談が可能な施設
- 日本年金機構の年金事務所
- 街角の年金相談センター
- 日本年金機構のコールセンター
- 市区町村の年金課
- FPや銀行などが行う、年金相談
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1-1.日本年金機構の年金事務所 利便性★★★★★
「年金事務所」は、日本年金機構が運営する地域管轄窓口で、全国に312か所(2020年4月1日現在)あります。
日本年金機構とは、国から委託を受けて公的年金事業の運営を担う特殊法人で2010年1月に設立されました。旧社会保険庁が「消えた年金問題」で解体し、日本年金機構がその業務の一部を引き継いで、年金保険料の徴収や年金給付業務を行っています。
公的年金(国民年金や厚生年金)の様々なお客様対応業務を、各地域の年金事務所が管轄しています。
1-2.街角の年金相談センター 利便性★★★★
「街角の年金相談センター(以下、年金相談センター)」は全国社労士会連合会が日本年金機構から委託を受けて運営する施設です。年金事務所のお客様対応業務のうち、主に「年金相談」と「年金請求に関する業務」を行います。
年金相談センターは全国に80か所ありますが、駅近くやショッピングセンター内など立ち寄りやすい立地にあるのが特徴の1つです。
街角の年金相談センターでも、年金事務所とほぼ同じ手続き、相談が可能です。
年金相談センターでできること
- 年金相談や、各種通知に関するお問合せ
- 個人のお客様の年金給付に関するご請求や各種変更手続き
- 「年金手帳」「年金証書」などの再発行の受付(オフィスを除く※)
- 年金と、雇用保険・労災・医療保険との関係についての相談
最寄りの相談センターはこちらから確認できます。:全国社会保険労務士会連合会「街角の年金相談センター一覧」
1-3.日本年金機構のコールセンター 利便性★★
日本年金機構は電話による相談窓口も設けており、これを「ねんきんダイヤル」と呼びます。
年金相談は可能ですが、相談内容が限定されていること、年金請求手続きはできないことに注意が必要です。また、実際に年金事務所で相談するときの必要書類なども案内してくれます。
- ねんきんダイヤル:0570-05-1165(ナビダイヤル)
- 相談時間:平日の午前8時30分~午後5時15分(月曜日は午後7時まで延長)、第2土曜日の午前9時30分から午後4時
なお、年金事務所や年金相談センターの相談時間も原則上記と同様ですが、一部異なることもあるため、HPなどで確認しましょう。
1-4.市区町村の年金課 利便性★
お住いの市区町村の年金課で相談可能な内容は、「国民年金に関する相談」限定となります。
対象としては、個人事業主やフリーター、外国人の方の年金に関する相談に対応しています。
なお、年金事務所内にも「国民年金課」はあります。
各市区町村の上部組織という位置づけで、管轄地域内の国民年金事務は年金事務所で行っていますので、国民年金に関する相談は年金事務所でも可能です。
1-5.FPや銀行での年金相談 利便性★★★
年金事務所へ行かなくても、FP(ファイナンシャルプランナー)や社労士、取引先の銀行が年金相談をしてくれることもあります。彼らも年金のシミュレーションは可能ですので、概算の年金額が把握したい場合や、年金に加えて保険の相談もしたいという場合は、このような相談サービスを利用する方法も一つです。
現在は、ウェブ面談で気軽にFPなどの専門家に相談ができますので、積極的に活用しましょう。
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2.そもそも年金事務所はどんな役所?
ちょっと本題からは寄り道となりますが、参考まで、年金事務所はどのような業務を行う役所なのかを見ていきましょう。年金事務所の組織と対応業務について説明します。
2-1.年金事務所の組織と対応業務
年金事務所の組織は主に次の4つです。
- 厚生年金適用調査課
- 厚生年金徴収課
- 国民年金課
- お客様相談室 ←年金相談はココ!
「厚生年金適用調査課」と「厚生年金徴収課」は、主に厚生年金に加入する事業主などが手続きや相談を行うところです。中小事業主など厚生年金に関する疑問があれば、事業所を管轄する年金事務所の「適用調査課」に行きましょう。予約は不要です。
「国民年金課」は、主に国民年金の加入や国民年金保険料の納付に関する手続きや相談を行うところです。市区町村の担当課でも同様の手続きが可能で、どちらも予約不要です。
「お客様相談室」は、主に年金相談や年金請求手続きを行うところです。年金証書の再発行や年金受取口座の変更などの簡単な手続きは店頭の窓口でできますが、時間のかかる相談業務や請求手続きは「相談窓口」といわれる個別のブースで行います。
相談窓口では、専門的な知識を持った日本年金機構の職員や委託を受けた社労士が「年金相談員」として対応します。
相談はどこでもOK!
なお、年金相談は、居住地に関わらず、全国の年金事務所や年金相談センターで可能です。
以下の解説では、相談窓口でできることを中心に説明します。
2-2.相談窓口での相談内容
年金事務所の相談窓口で、良くある相談内容は次の通りです。
- 相談内容①:年金の請求手続き
- 相談内容②:年金の見込額の照会
- 相談内容③:年金記録の確認・訂正
- 相談内容④:その他の相談
相談内容①:年金の請求手続き
相談窓口の対応で最も多いのが、年金の請求に関する内容です。老齢年金や遺族年金、障害年金の手続きには30分~1時間程度かかります。
郵送も可能ですが、必要書類が複雑で、年金記録のチェックなどもあるため相談窓口での手続きがおすすめです。
相談内容②:年金の見込額の照会
次に多いのが、老齢年金の見込額の照会です。
50歳以上の人の「ねんきん定期便」には基本的な見込額が記載されていますが、繰上げ・繰り下げ受給したときの試算や退職年齢に応じた試算などは、相談窓口(ねんきんネットで一部は可能)でしかできません。
詳細な条件を設定して年金見込額を試算することで、自分にあった定年後の働き方や年金の受取方法が選択できるようになります。また、遺族年金の見込額試算も可能です。
相談内容③:年金記録の確認・訂正
年金保険料を支払ったのに「ねんきん定期便」に記載がない、自分の加入記録がわからない、という人は、相談窓口で自分の年金記録を確認してもらいましょう。転職の多い人などは年金記録がうまく統合されずに記録漏れの可能性があります。
記録漏れを放置すると、年金がもらえなかったり年金額が減ってしまうリスクがあるので注意しましょう。
相談内容④:その他の相談
そのほかにも、次の相談が可能です。
- 年金制度に関する照会
- 受給中の年金に関する照会
- 年金定期便の内容の照会
- 「ねんきんネット」のアクセスキー(※)の交付 など
3.年金相談の予約方法と相談までの流れ
相談内容が決まったら、まずは年金相談の予約を取りましょう。
ココに注意
予約なしで年金事務所に行った場合、当日の相談枠がいっぱいで相談ができなかったり長時間待たされる可能性が高いです。
3-1.年金相談は電話予約が必須
年金相談を希望する場合、次の番号に電話しましょう。相談日の1か月前から予約可能です。
年金事務所の相談予約はこちら
予約受付専用電話:0570-05-4890 ※ダイレクトにオペレーターにつながります。
受付時間:平日の8時30分~17時15分
※1回の相談時間は30分単位で、おおむね1時間程度となります。(事務所による。)
※12時~13時は窓口休憩のため、予約が入れれない事務所が多いです。
※予約にはご自身の年金番号が必要です。番号のわかるものを用意して架電しましょう。
※最寄りの年金事務所に電話しても予約できますが、混み合って通じないことがあります。
基礎年金番号かマイナンバーのわかる資料を準備し、電話で相談内容を伝えるだけです。
予約専用電話では、全国の年金事務所と年金相談センターの予約を一括して取り扱うため、予約を入れる年金事務所をしっかりと確認しましょう。
同じ地区にある年金事務所と年金相談センターの取り違えはよくあります。
3-2.相談時に持参すべきもの
相談内容によって持参すべきものは異なりますが、ほとんどの相談で必要なのは次の2つです。
相談に持参すべきもの
・本人確認資料(マイナンバーカード、運転免許証 など)
・基礎年金番号確認資料(年金手帳など)またはマイナンバー資料(マイナンバーカードなど)
基礎年金番号やマイナンバー確認資料が見つからない場合は年金相談員に伝えましょう。氏名と生年月日から調べてくれます。ただし、個人情報保護の観点から本人確認資料は省略できません。
また、代理人が来所する場合には委任状が必須です。年金記録や年金見込などの個人情報を、本人の同意無しで代理人に伝えることはできないからです。
ご家族が代理で行く場合や、障害や要介護などでご本人が年金事務所に来れない場合は、委任状が必要ですので、注意しましょう。なお、委任状のフォーマットはこちらからDLできます。
3-3.年金事務所に到着したら
まずは、総合受付でお名前と予約をした旨を伝えましょう。係員が相談番号札を発行してくれます。
ほとんどの年金事務所で、相談は番号管理されており、番号を呼ばれたらブースに行って相談するという流れになります。
相談までの待ち時間で、質問票の入力を依頼されるケースが多いので、スムーズに相談できるよう、情報を記入して待ちましょう。
3-4.コロナ禍での相談状況は?早く相談できるコツは?
新型コロナウイルス感染症の影響で、年金事務所側も、1日の相談件数を制限している場合があります。
混雑状況は年金事務所のキャパシティによるところが大きく、従来より早い日程で予約が取れるところもあれば、少し待たされるところもあります。
混雑状況については、年金機構が毎月の込み具合を開示していますので、こちらを参考に予約してください。
また、同じ相談・手続であっても、年金加入状況によって必要書類が異なるのが年金相談・年金手続きの特徴です。初めて相談・手続きする人も多いので、「予約時の必要書類の案内」をしっかり聞くことが、迅速・確実な相談・手続きのポイントと言えます。
予約受付専用電話で予約を取り、案内された必要書類を忘れずに持参することが重要です。予約なしの訪問や年金事務所への電話は、混雑していて長時間待たされる可能性があります。
参考
なお、余談ですが、新型コロナウイルス感染症の状況に関係なく、2022年4月より老齢年金の請求手続きが増える(※)ため、相談者数が増えると予想されます。
※女性の老齢厚生年金開始年齢が61歳から62歳に引き上げられることにより、2021年4月以降の1年間は女性の老齢年金請求手続きが減少。2022年4月より例年通りに戻る見込み。
4.年金事務所での年金相談のメリット、デメリット
年金事務所で相談する一番のメリットは、実際の加入記録に基づいた、具体的な年金相談ができることです。
また、支給開始年齢の繰り上げ、繰り下げによる受取額のシミュレーションや、必要に応じて年金記録の訂正や請求手続きもできます。
正直なところ、年金制度は非常に複雑で、年金に詳しい銀行員や社労士でもわからないことは山ほどあります。
一般的な相談なら街角の年金相談センターでも可能ですが、漏れた年金記録を探したり、旧年金制度や統合された共済制度などに加入していた人の取り扱いなどは、年金事務所でないと対応できません。
公的機関の出先として、専用の端末で、実際の加入履歴から見込み額が算出可能です。
一方、デメリットは、予約を取って年金事務所に行かないといけないことです。
電話して予約していくのはちょっと億劫ですよね。
また、年金事務所の相談員がどこまで親身に相談に乗ってくれるか?という心配をされる方も少なくありません。
基本的には、年金の専門家が丁寧に対応してくれるので、安心していただけると良いのですが、セカンドオピニオン的に、FPや社労士などの専門家にも確認したいの気持ちもわかります。
そのような場合は、必要に応じて保険相談なども利用すると良いでしょう。