個人年金保険とiDeCoの違いを徹底解説!併用はできる?社労士が解説

iDeCo/NISA
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老後の生活費を準備する方法にはいくつかありますが、その中でも「個人年金保険」や「iDeCo(個人型確定拠出型年金)」への加入を検討している方もいるでしょう。

どちらも公的年金だけでは不安な場合などに任意に加入するものですが、具体的にどのような違いがあるのか気になります。

そこで今回は、個人年金保険とiDeCoの違いを分かりやすく比較するとともに、ふたつを併用することはできるのかどうかについても解説していきます。

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1.個人年金保険とiDeCoの違い

個人年金保険とiDeCoは、どちらも老後資金を準備するための「私的年金」ですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

まずはそれぞれの特徴を確認していきましょう。

1-1.個人年金保険とは

個人年金保険は、60歳や65歳といったように契約時に定めた年齢まで保険料を払い込むことで、一定の年齢に達したときに年金を受け取れる保険です。

年金を受け取る期間は、5年間や10年間などの一定期間に限られている確定年金と、一生涯に渡って受け取れる終身年金があります。

また、受取方法は年金形式のほかにも、一時金として受け取る方法もあります。

1-2.iDeCoとは

iDeCoは、自分で拠出した掛け金を自分で運用し、60歳以降に掛け金と運用益の合計額を年金として受け取ることができるものです。

掛け金の拠出は60歳までで※、原則として60歳までは引き出すことはできません。

2022年5月以降は65歳まで拠出可能 出典:iDeCo公式サイト

加入対象者は、自営業や個人事業主、専業主婦(夫)、企業年金制度のない会社員、企業年金加入者(※)と、公務員等共済加入者など、ほとんどの方が対象となっています。

※企業型確定拠出年金の加入者については、企業型年金規約でiDeCoに加入できることを定めている場合のみiDeCoに加入できます。出典:iDeCo公式サイト

また、次のようなさまざまな税制上の優遇措置が設けられています。

さらに詳しく

・拠出した掛け金は全額が「所得控除」の対象

・運用益は非課税

・年金受取時に「公的年金等控除」や「退職所得控除」を受けられる

1-3.個人年金保険とiDeCoの主な違い

ふたつの主な違いを以下にまとめましたのでご覧ください。

比較項目 個人年金保険 iDeCo
年金受取開始年齢 保険会社ごとの所定の開始年齢の範囲内で任意に選択。一般的に60代に受取を開始するケースが多い 原則60歳以降
年金受取金額 契約時に決まる商品が多い(定額年金) 運用により変動する
年金受取時の税金優遇措置 なし あり

・年金受取:公的年金等控除

・一括受取:退職所得控除

保険料 保険会社ごとの所定の加入条件の範囲内で任意に設定 月額5,000円以上1,000円単位で自由に決められる(ただし、職業によって上限額が異なる)
所得控除の種類 個人年金保険料控除 小規模企業共済等掛金控除
所得控除の金額(所得税) 4万円まで(※) 全額
所得控除の金額(住民税) 2万8,000円まで(※) 全額
中途解約 原則不可

※:平成24年4月1日以降の契約のもの。平成23年12月31日以前の契約の場合は所得税5万円まで、住民税3万5,000円まで

このように、保険料の設定や税金面、中途解約の可否など、さまざまな点において違いがあります。

なお、払い込んだ保険料に対する「所得控除」は、会社員などは年末調整のときに、自営業の方などは確定申告の際に申請することで還付を受けられます。

2.個人年金保険とiDeCoのメリット・デメリット

個人年金保険とiDeCoのメリットとデメリットについて確認していきましょう。

2-1.個人年金保険のメリット・デメリット

個人年金保険のメリットとデメリットについて、以下にまとめましたのでご覧ください。

メリット デメリット
・運用は保険会社に任せられる

・中途解約が可能で、解約返戻金が受け取れる

・保険料払込期間や、年金受取年齢などを自由に決められる

・返戻率が低い

・中途解約すると元本割れする

・インフレに対応できない

個人年金保険のメリット

個人年金保険は、積み立てた保険料を運用するのは保険会社なので、運用の知識がなくても問題ありません。

また、中途解約が可能で、解約時には解約返戻金を受け取ることができますが、契約してすぐに解約する場合は、解約返戻金がない場合もあります。

ほかにも、保険料の払込期間や受取開始年齢、受取年数などを自由に決められるというメリットがあります。

個人年金保険のデメリット

個人年金保険は返戻率が低いというデメリットがあります。

返戻率とは、払い込んだ保険料の総額に対して、いくら年金が受け取れるかを示したもので、以下の式で計算します。

返戻率(%)=受取年金額÷払込保険料総額×100

返戻率が100%よりも大きくなる程、返戻率が高いということになりますが、低金利が続いている状況ではあまり大きな返戻率は期待できません。

また、中途解約をすると、元本割れを起こすというデメリットもあります。

元本割れとは、解約返戻金が払い込んだ保険料よりも少額になってしまうことをいいます。

ほかにも、将来受け取れる年金額が契約時に決まるため、受け取るときにインフレが起きていても対応できないというデメリットがあります。

3. iDeCoのメリット・デメリット

iDeCoのメリットとデメリットについてもまとめましたのでご覧ください。

メリット デメリット
・拠出金が全額所得控除の対象になる

・運用益は非課税

・受取時に所得控除が受けられる

・転職などをしても継続できる

・原則60歳までは引き出せない

・元本割れリスクがある

・手数料がかかる

・拠出金に上限がある

3-1. iDeCoのメリット

iDeCoには、拠出金が所得控除の対象になる、運用益が非課税、年金受取時にも所得控除が受けられるといった税制上のメリットがあり節税効果が期待できます。

また、iDeCoにはこれまで拠出してきた資産を持ち運べる「ポータビリティ制度」があるため、転職や退職をしてもそのまま継続できたり、転職先に企業年金が導入されていれば企業型確定拠出年金に移換したりすることもできます。

企業年金と異なり、私的年金であるので当然のことですが、これも一つのメリットと言えます。

参考:iDeCo公式サイト 企業年金・個人年金制度間のポータビリティ

3-4. iDeCoのデメリット

iDeCoは、原則60歳まで引き出しができないことや、運用次第で元本割れしてしまうリスクがあるというデメリットがあります。

また、以下のような手数料を支払う必要があります。

手数料名 手数料 備考
加入・移換時手数料 2,829円(初回のみ) 加入時または移換時の手数料
加入者手数料 105円(掛金納付の都度) 掛金を拠出するたびに支払う
還付手数料 1,048円(その都度) 国民年金の未納月があった場合などでiDeCo掛け金を返金(還付)する必要があるとき、還付金から差し引かれる

ほかにも、口座開設している金融機関にも所定の手数料を支払いますが、楽天証券などのように、口座管理手数料のうち楽天証券に支払う運営管理手数料は無料としている証券会社もあります。

参考:iDeCo口座管理料の比較

さらに、iDeCoでは以下のように、職業によって1か月の掛け金に限度額が決められています。

加入資格者 月額拠出限度額
第1号被保険者(個人事業主やフリーランスの方) 6万8,000円

(国民年金基金または付加年金保険との合計で)

第2号被保険者

(会社員や公務員の方)

勤務先に企業年金なし 2万3,000円
「企業型確定拠出年金」に加入している 2万円
「確定給付企業年金」に加入している  

1万2,000円

「企業型確定拠出年金」と「確定給付企業年金」に加入している
公務員など
第3号被保険者

(専業主婦など、2号被保険者の扶養に入っている方)

2万3,000円

掛け金の上限があるため、「もっと拠出したい」という方にはデメリットとなります。

なお、個人事業主や第1号被保険者で、国民年金基金や付加年金にも加入している場合、合計で6万8,000円までとなります。

また、第2号被保険者は勤務先の企業年金制度によって限度額が異なるため、不明な点がある場合は勤務先に確認しましょう。

4.個人年金保険とiDeCoは併用できる?

個人年金保険とiDeCoにはそれぞれメリットとデメリットがあり、どちらを選べばいいのか迷ってしまう方もいるでしょう。

両方のいいとこ取りができればベストですが、ふたつを併用することは可能なのでしょうか。

4-1.個人年金保険とiDeCoは併用可能

結論から申し上げますと、個人年金保険とiDeCoは併用が可能です。併用することで両方のメリットを生かしつつ、デメリットをカバーすることができるのです。

具体的には、iDeCoのデメリットである「60前に解約できない」点を個人年金でカバーしたり、個人年金のデメリットである「返戻率が低い、インフレに弱い」点をiDeCoでカバーすることができます。

重要!

所得控除について見ると、個人年金保険は「個人年金保険料控除」の対象に、iDeCoは「小規模企業共済掛金控除」の対象となり、重複しないのでそれぞれを活用することができます。

節税効果がありますので、年末調整や確定申告の際には忘れずに申請しましょう。

ただし、両方に加入すると保険料と掛け金を支払うことになるため、家計費とのバランスを考えることが大切です。

5. iDeCoの始め方

iDeCoを始めるには、5つのSTEPで手続きをすすめていきます。

STEP1:加入資格の有無を確認する

iDeCoへの加入資格があるかとともに、掛け金の限度額も確認します。

加入資格の有無については、iDeCoの公式サイトでチェックできます。

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STEP2:掛け金を決める

掛け金は、月々5,000円以上1,000円単位で、ご自身の月額上限額の範囲内で設定できます。

なお、「もっと支払いたい」、「金額を減らしたい」といった場合は、年に1度だけ金額を変更することができます

STEP3:運用商品を選択する

運用商品によって、特徴や仕組み、リスクとリターンの関係などが異なるため、運用商品の詳細をよく理解したうえで商品を選びましょう。

不明な点などは、iDeCoを取り扱っている金融機関に相談してみると良いでしょう。

STEP4:金融機関を選択する

実際にiDeCoを始めるには、iDeCoを取り扱っている金融機関を通して加入手続きを行います。

金融機関ごとに取り扱っている金融商品やサービス内容が異なるため、利便性が高くご自身が利用しやすいところを選びましょう。

ちなみに、SBI証券や楽天証券の公式サイトでは、具体的なシミュレーションをすることができます。

実際にシミュレーションすることでイメージがつきやすくなるため、ぜひ試してみましょう。

 

個人年金保険とiDeCoは、いずれも老後資金の準備のために活用されているものですが、特徴やメリット・デメリットに違いがあります。

ふたつを併用することも可能なので、それぞれのメリットを生かした活用方法を検討してみると良いでしょう。

ただし、保険料や掛け金が家計の負担にならないようにご注意ください。

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